【嫌われる勇気】にまつわる誤解 アドラー心理学

エッセイ

はじめに

人は「嫌われる勇気」を誤解している。

数年前、母親とともに書店へ行った時の話です。

本棚の目立つ所に、アドラー心理学のベストセラー本「嫌われる勇気」が置いてありました。

私自身この本が大好きで、続編も含めてそれぞれ20回以上は読み返したと思います。

母もこの本を読んでくれたら嬉しいと思い、「お母さん!この本おすすめだよ!!」と言って本を指さしました。

そうすると母は「え~、私嫌われたくないな~」と言ってその場を去ってしまいました。

母は愛想がよく、人から好かれることが得意でした。そんな母から見たら、「嫌われる勇気」というタイトルに反発を覚えるのにも納得がいきます。きっと、嫌われることや孤独を推奨されていると感じたのでしょう。

私の母と同じように、「嫌われる勇気」というタイトルでこの本を読まないという人は多いのかと思います。

実際に、「嫌われる勇気」の著者の一人、岸見一郎先生は、のちに出版された本の中で「タイトルがひとり歩きしている感があります」と語っています。(哲学人生問答 17歳の特別教室 岸見一郎 講談社)

しかし、少し過激なタイトルから受ける印象と本の内容はだいぶ違い、適切な対人関係のあり方を教えてくれます。

「嫌われる勇気」のもう一人の著者、古賀史健さんは同書の後書きでこんなことを言っています。

「人生には、何気なく手に取った一冊の本が、翌朝からの景色を一変させてしまうような出会いがあります」(嫌われる勇気 古賀史健 ダイヤモンド社)

私にとって「嫌われる勇気」はその出会いの一つでした。

なので、私の母が持っていたような「嫌われる勇気」に対する誤解を解きたいと思いこの記事を書き始めました。

嫌われる勇気とは

「嫌われる勇気」という言葉だけ聞くと、積極的に人に嫌われるようなことをしろとか、人から嫌われた方が良いといった主張を想像してしまうかもしれません。

けれどもこの本の中でそういった主張をしているわけではありません。

「嫌われる勇気」を一言で説明するとしたら、それは、「自由に生きる」ということです。

自由に生きるとはどういうことか。

「承認欲求」という言葉はSNSが生活に浸透したこの時代多くの人がなじみ深い言葉かと思います。

この承認欲求によって、誰かから認められたい、好きになってもらいたい、注目されたい、嫌われたくないと願い、実際、それを実現するために行動します。

誰かに認めてもらうためのに作られた行動、誰か好きになってもらうために作られた感情、誰かに注目されるために作られた過去、誰からも嫌われないために作られた自分。

そのような生き方は、自分の人生を歩んでいると言えません。
人から承認を得ることを目的として生きると、他人の人生を歩むことになってしまうのです。

10人の人がいたら、きっとそのうち2人は自分のことを好きになってくれるでしょう。でも、10人のうち2人は自分が何をしても自分のことを嫌うでしょう。
自分を嫌う2人にばかり気を取られて、自分らしく生きられないのは不自由な生き方と言わなければなりません。

人から嫌われるのは嫌だけど、自分が自由に、自分自身の人生を歩もうとした時には、必ず自分を嫌う人が現れます。
人から嫌われるということは、自分らしく生きていることの証でもあるのです。

なので、「嫌われる勇気」とは、積極的に嫌われることを推奨しているのではなく、自由に生きるためにも嫌われることを「恐れるな」ということなのです。

ニュアンス的には、「嫌われるのはまぁ仕方ないことだよね」くらいの緩さの方が受け入れやすい人もいるかと思います。

嫌われる勇気を持つために

そうは言っても人から嫌われたら傷つくし落ち込むよ!と思う人がいるかと思います。

そこで「嫌われる勇気」の中でテーマになっていた「課題の分離」という考え方について紹介します。
これを実践できるだけでも、嫌われて傷つくということも含めて、対人関係の悩みは一気に減ります。

「課題の分離」は、何か解決しなければならない課題があった時に、「それは誰の課題か」を考えます。
そしてもしそれが「自分の課題」であればその課題に他者を介入させず、もし「他者の課題」であればその課題に介入しません。

ここで言う「介入」とは、相手が解決しなければいけない課題や、責任を負うべき課題に対して、自分が解決しようとしたり過度に注目したりすることです。

自分がどういう行動をとるかは「自分の課題」ですが、その自分の行動に対して相手がどう反応するかは「相手の課題」です。
相手が自分のことを嫌うか嫌わないかは「相手の課題」であり、それを決めるのは相手なのです。

なので、自分のことを嫌う他者が現れたとしても、それを自分が望んだ方向に操作することは出来ないし、してはいけないのです。

「相手の課題に介入しない」そして「自分の課題に注目をする」、もっと簡単に言うと「自分ができることだけをやる」。

これができるようになると、対人関係のストレスは一気に減りますね。

おわり

もしも「嫌われる勇気」というタイトルを見て、食わず嫌い的な感覚で読んでいないという人がいたらぜひ少しでもいいので読んでみてください。

本文中には「嫌われる勇気」だけではなく、対人関係の悩みを解決し、人生を幸福にする道しるべがあります。

アドラー心理学は「共同採石場」と例えられていることもあり、誰もがそこから何かを掘り出すことができると言われています。

もしかしたら、私が掘り出した石とは違うものを皆さんは掘り出すのかもしれませんね。

そうしたらぜひともアドラーについて語り合いたいものです。石の見せあいっこしましょう。

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